【テニス】なぜテニス選手はラケットを投げるのか? メーカーの本音「自腹で買ってないから…」

東スポ2022年05月29日 05時15分
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プロテニスプレーヤーの暴挙が止まらない。現在、開催中の4大大会「全仏オープン」(パリ)の女子シングルス2回戦(26日)で、世界ランキング63位のイリーナ・ベグ(ルーマニア)が投げたラケットが観客席の子供に当たる衝撃的な事件が起きた。

被害に遭った子供にケガはなく、警告を受けたベグは「本当に申し訳なかった」と謝罪。しかし、ひとつ間違えば大事故につながっていただけに、重い制裁を科さなかった大会側への批判も集まっている。

テニス選手の〝ラケット投げ〟は今に始まったことではない。特にここ最近は頻発しており、今年2月のメキシコ・オープンの男子ダブルス1回戦ではアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)が主審の判定に激怒し、ラケットで審判台を強打。3月のBNPパリバ・オープンでは〝悪童〟ニック・キリオス(オーストラリア)が怒りに任せて投げたラケットが、ボールボーイに直撃しかける危険なシーンがあった。昨年は大坂なおみもラケットをコートに叩きつけて騒動となり、選手の問題行動が後を絶たない状況だ。

事態を重く見た男子プロテニス協会(ATP)は今年4月、プレーヤーの危険行為に対する行動規定の見直しに踏み切る意向を示し、内部文書で「あまりに多くの危険な瞬間を見てきた。これらは我々のスポーツに悪い光を当てている」とのコメント。そんな折、よりによって子供にラケットが直撃する前代未聞のトラブルが発生しただけに、暴挙に対する周囲の目は厳しくなるばかりだ。

テニス選手はコートに立てば孤独の戦い。試合中のストレスや怒りをぶつけるのはラケットしかない。ユーチューブでは選手がラケットを強打するシーンを集めた動画が投稿されているが、この現象についてテニス用品の大手メーカー関係者はこんな本音を漏らす。

「彼らはラケットを自腹で買ってないから壊せるんでしょう。トップ選手はスポンサーからタダでラケットを提供されますから。自腹だったら叩きつける前に制御がかかりますよ。メーカーとしは悲しいですね」

ラケット投げに関し、国際テニス連盟の規定では一定の行為を超えると罰金。それとは別にメーカーと選手の間でもラケットを破壊した際の罰金が契約書で交わされている。前述の関係者は「常習犯になると罰金の金額も高めに設定されるものです」と内幕を明かす。

以前、大坂と契約するヨネックスは「弊社のテニスラケットは、国内の自社工場にて最新の技術と熟練の技で1本1本を丁寧に生産しております。残念なことが起こらないように望みます」と切実に訴えた。果たして、プレーヤーの暴挙がなくなる日は来るのだろうか。