現役最年少棋士の藤本渚四段、対局会場間違え不戦敗…デビューから無敗の6連勝ストップ

 将棋の竜王戦6組で6日、現役最年少棋士の藤本渚四段(17)が対局会場を勘違いし、不戦敗となった。藤本四段は先輩棋士から一目を置かれる終盤力を持つ有望株で、昨年12月のデビューから無敗の6連勝中だったが、思わぬ形で連勝が止まった。

藤本渚四段

 ハプニングが起きたのは、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われる予定だった神谷広志八段(61)との対局。棋士による将棋の公式戦は、東京の将棋会館、大阪市の関西将棋会館、名古屋市の名古屋将棋対局場で行われている。竜王戦は原則として段位が上の棋士が所属する対局場で行われる。神谷八段は関東所属で、両対局者への対局通知は「東京対局」で出されていたが、関西所属棋士である藤本四段は今朝、大阪市の関西将棋会館に姿を見せた。

 神谷八段は午前9時半に、東京の将棋会館対局室に入り、藤本四段の到着を待ったが、午前9時50分頃、日本将棋連盟の職員から「藤本四段が大阪に来てしまい、本日の対局はできません」と告げられた。

手をあげて仰天した神谷八段は「まさか、そんな」とつぶやき、すぐに荷物をまとめて対局室を後にし、開始時刻の午前10時を待たず、記録係が神谷-藤本戦の盤駒を片付けた。

 藤本四段は午前10時半ごろ、関西将棋会館の事務室から東京の将棋会館に電話をかけ、神谷八段に「自分の確認不足で、大変申し訳ありません」と謝罪した。神谷八段は「ミスは誰にでもある。次にしないことが大事だよ」と優しく言葉を返した。神谷八段は「孫と同じくらいの年の棋士で、かわいいと思っているし、全然、気にしていません。妙な形で連勝が止まってしまい、無念だと思う」と気遣った。

 棋士が対局場を間違えて不戦敗になった事例は、2016年の叡王戦・久保利明九段-豊島将之九段戦があり、東京対局で豊島九段は予定通り対局室に入ったが、久保九段が大阪対局と勘違いして対局場に行くことができず、不戦敗となった。

対戦相手が対局場を間違えたことを知らされ、仰天する神谷八段=吉田祐也撮影