フリークラスからの「復活宣言」――50歳を迎える森内九段の覚悟と挑戦

将棋界における「名人」は、全棋士の頂点に立つ特別なタイトルと言える。中でも、5期以上獲得して永世名人の資格を得た棋士たちは、引き際も注目の的となる。かつて大山康晴十五世名人が「A級から陥落したら引退」とささやかれながら、69歳で現役のまま死去するまでその地位を守り続けたことは語りぐさとなっている。

ただ、その後、中原誠十六世名人と十七世名人の資格を持つ谷川浩司九段は、陥落後もB級1組で戦った。永世名人ではないが、加藤一二三九段はC級2組でも指し続けた。77歳でフリークラスへの降級が決まるところまで指し、引退したのは記憶に新しい。

それだけに、名前を挙げた棋士たちより若い森内の選択は意外に感じられた。B級1組に落ちても、また好成績を挙げればA級に復帰できるし、それを果たした例は数多い。何しろ、フリークラスに転出すると、もう名人の座を目指すことはできなくなるのだ。