予想外の大激戦となり、23日投開票の衆参5補選に注目が集まっている。補選が行われるのは衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区と4区、参院大分選挙区。15日、岸田首相が爆発物を投げつけられたのも、衆院和歌山1区の応援演説会場だった。 【衆院山口4区補選】自民“アベシンジ候補”遠い圧勝 昭恵夫人発言に林派カンカンでヤル気なし 当初は「最低でも3勝2敗、うまくいけば全勝もある」と余裕をかましていた岸田自民だが、この週末に発表された情勢調査に衝撃が走っている。 共同通信が14、15日に電話調査や取材を基にして5補選の情勢を探ったところ、安倍元首相の死去で補選になった山口4区は後継の自民候補が引き離しているが、他の4選挙区は「接戦」だというのだ。読売新聞が13~15日に実施した調査でも、自民優位は山口4区だけで「4選挙は接戦」だった。つまり、自民の「1勝4敗」もあり得る情勢なのだ。 「もともと野党系が強い参院大分補選の激戦は予想されていたが、大分は取りこぼしても4勝1敗かとみられていました。とりわけ山口2区は楽勝だと誰もが思っていた。自民が議席を独占する保守王国の山口で、2区はもともと安倍さんの実弟・岸信夫前防衛相の選挙区。岸さんが健康問題で引退を決め、長男の信千世さんが地盤を引き継いだ。いきなりホームページで家系図を自慢して炎上しましたが、安倍さんの弔い合戦の様相もある補選で、圧勝は揺るぎないはずでした。すんなり“次の選挙”の公認を勝ち取るために、得票率で4区をどれだけ上回れるかだけが焦点だったのです」(自民党関係者)
衆院選「4→3」減区問題も影響
父・岸信夫前防衛相(左)の引退で、地盤を引き継いだ長男・信千世氏だが…(C)日刊ゲンダイ
次の衆院選から山口の選挙区は4から3に減区される。公認は現職優先が原則だから、絶対に勝てるこのタイミングで岸家は世襲したという見方もある。それが、まさかの接戦。 岸信千世氏は岸家と安倍家の血を引く政界サラブレッドだが、山口は世襲政治家だらけということも問題を複雑にしている。1区の高村正大氏も、3区の林芳正氏も世襲。さらに、引退した河村建夫元官房長官の長男・建一氏も国政を目指してリベンジを狙う。 河村建夫氏は21年に山口3区の公認争いで林に敗れ、長男で秘書の建一氏を比例中国ブロック単独で立候補させることを条件に引退を表明。ところが、県連会長だった岸信夫氏が「山口県連とは何ら関わりのない候補」と建一氏を切り捨て、同ブロックの杉田水脈氏を「名簿上位登載にご配慮を」と党本部に要請。急きょ比例北関東ブロックに回された建一氏は落選し昨年の参院選でも全国比例で当選かなわず浪人中だ。 「杉田水脈を当選させたい安倍さんが弟の信夫さんをけしかけて、河村家を山口から追い出したと地元では言われとる。河村家の支援者は安倍家・岸家への恨みが深いから、岸信千世を全面支援なんてできるわけがない。信千世が圧勝ならどうしようもないけど、情勢調査で接戦となると、いろんな動きが出てくる。もし信千世が落選すれば、中ぶらりん状態の建一が2区に名乗りを上げる余地も生まれるからね。高村家もライバルをひとりでも減らしたければサボタージュでしょう。もちろん、林家だって選挙区調整を考えたら信千世はいない方がいい。岸陣営は、都内で病気療養中の父・信夫さんが選挙区入りできていないことも響いとるね」(地元関係者) 山口から、立派な家系図の岸家が消滅する可能性も出てきた。