無人島を丸ごと基地に…「国内最大規模の事業」馬毛島 作業員はピークで4000人以上 業者「死に物狂い」

 防衛省が西之表市馬毛島で進める米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備は、12日で基地本体の着工から3カ月となる。真っさらな島を丸ごと南西防衛の一大拠点とする巨大事業だけに、同市2港のほか、鹿児島市など本土の少なくとも7港で大型の基礎部を造るなど「現場」が広がっている。大量の資機材を搬出する準備も進み、同省は工事をさらに加速させたい考えだ。

 商業施設が立ち並ぶ鹿児島市新栄町や谷山港の沿岸部を進むと、海上で建設中の巨大な構造物が目に入る。防波堤や岸壁の土台となる「ケーソン」(大型の鉄筋コンクリート製の箱)の製作用台船だ。

 ケーソンは幅20メートル、長さ30メートル、高さ20メートル前後。谷山港の2カ所では10階建てビルに相当する高さ30メートルほどの鉄筋の足場がそれぞれ組まれ、作業員が慌ただしく行き交っていた。近く夜間も含めた24時間態勢で製造する。

 型枠が自動的に上昇してコンクリートを固める特殊な工法を採用。ケーソン1基当たりの工期を従来の4カ月から1カ月に短縮できる。従来方式と合わせ、3000~4000トン級のものを3年かけて70基ほど造る計画だ。関係者は「国内ではまずない規模の事業。全国から500人近く集まっている」と話す。

 県や関係者によると、工事関連の港湾利用は、鹿児島港でケーソン製作3カ所、重機の組み立てヤードなど7カ所。このほか米ノ津(出水市)、鹿屋(鹿屋市)、大泊(南大隅町)、西之表(西之表市)の4港に使用許可を出している。

 さらに住吉(同市)、山川(指宿市)、串木野(いちき串木野市)、枕崎(枕崎市)の4漁港も使用。大量の資材や重機を置いたり、数トン~数十トンのコンクリートブロックを数万個造ったりする。

 防衛省は本年度、馬毛島に資機材を運び入れるための仮設桟橋の完成を急ぐ。3月下旬から、港湾施設とともに整備に着手。第1段階である基礎石(捨て石)の投入が島沿岸で続き、その後、ケーソンなどを置いていく。

 仮設桟橋は東部に3本造り、長さ約540~640メートル。うち2本は1年後に完成予定。作業員数も1年後にピークとなり、3000~4000人以上が入る予定だ。

 県砕石協同組合連合会によると、捨て石の2月の出荷量は基地工事に伴い、前年同月の約10倍の約5万8700立方メートルに上り、1カ月で直近21年度の年間出荷量の約7割に達した。「出荷量が減少傾向にある中で大きな需要」(事務局)という。

 ただ、現場の人手や機材は長引く不況で不足している。重機や燃料、人件費の値上がりで利益は高いとは言えず、今後、特需が続くかも見通せない。捨て石の投入が完了しないと、次の工程に進めず、工事全体の遅れにつながる。

 防衛省は滑走路や誘導路は2年後、自衛隊最大の護衛艦が入港可能な港湾施設は4年後の完成を目指している。砕石協同組合連合会の中馬浩会長は「求められる数量に対し、あまりにも期間が短い。うれしい話だが、死に物狂いだ」と話した。

馬毛島の基地工事の進み具合や、鹿児島市からどれほど離れた距離にあるのか地図で確認する

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