スペイン飛び地に移民8千人が殺到 モロッコから海泳ぎ

 アフリカ大陸北端にあるスペイン飛び地セウタに17~18日、南に隣接するモロッコから海を泳ぐなどして8千人近くの移民が殺到した。スペインはアフリカから欧州を目指す移民や難民の「玄関口」の一つだが、これほどの規模は前代未聞だ。欧州連合(EU)はモロッコに取り締まり強化を呼びかけている。

 セウタはスペイン本土とジブラルタル海峡を挟んで約20キロの距離。AFP通信などによると、移民の大半は若い男性だが、子どもや女性も含まれており、1人が死亡したという。スペイン政府は警備増強のため軍隊を送り込み、すでに4千人をモロッコへ送還した。

欧州メディアは、モロッコ側が不法越境を黙認したと報じており、サンチェス首相は18日のテレビ演説で、「セウタと国境に秩序を取り戻す。スペインのみならず欧州にとっても重大な危機だ」と強調。フランスへの外遊を取りやめ、同日セウタを訪問した。

 背景にあると指摘されているのが、モロッコが8割を実効支配する西サハラをめぐる対立だ。旧スペイン領の西サハラ独立を目指す武装組織「ポリサリオ戦線」の指導者ブラヒム・ガリ氏が新型コロナウイルスに感染し、治療のために4月末、スペイン本国に渡った。これにモロッコ政府が反発していた。

 EUで移民問題を担当するヨハンソン欧州委員は18日、「スペインの国境は欧州の国境でもある。モロッコが不法な越境を防ぐことが大事だ」と訴えた。(パリ=疋田多揚)