「人事の岸田」が撃沈…閣僚は次々と更迭され、長男には「大スキャンダル」が勃発中

また最低支持率を更新

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 まさに突然の更迭劇だった。「政治とカネ」問題の他、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や選挙中の「影武者」疑惑などを抱えた秋葉賢也復興大臣が12月27日に辞任し、後任に渡辺博道元復興大臣が3年ぶりに復活した。ともに平成研に所属しているため、派閥にとっての大臣数は変わらず。これが「人事の岸田」のやり方なのか。

【写真】森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ、集中治療室へ…一体、何が起きたのか  当初は2023年1月下旬に始まる通常国会前に内閣改造が行われ、問題がある閣僚等が除外されるはずだった。にもかかわらず、年内に秋葉氏を更迭したということは、岸田文雄首相に相当の危機感があるに違いない。理由のひとつが下落する内閣支持率と思われる。  

中でも毎日新聞の調査の数字は非常に厳しいものだった。12月17日と18日に行われた調査では内閣支持率は25%で、政権発足以来の最低を記録した。また不支持率は69%と、11月の調査より7ポイントも増加している。ちなみにこれらの数字には既視感がある。2021年の“菅降ろし”の時の内閣支持率だ。  

2021年8月28日に毎日新聞と社会調査研究センターが行った世論調査では、菅内閣の支持率は26%で不支持率は66%と、最悪の数字を記録。その3日後に毎日新聞が「菅首相が党人事と内閣改造を行った後、9月中旬に衆議院解散に踏み切る」と報じた。

 この時は衆議院の任期満了が10月21日に迫っていたものの、コロナ禍は収まる様子を見せず、国民のいら立ちは政治に向けられていた。「このままでは選挙で戦えない」との声が党内から噴出し、翌日に菅義偉首相(当時)が「今は解散できる状態ではない」と火消しに走ったが、騒ぎは収まらず、ついに菅首相は9月の総裁選に不出馬を表明した。

「右派の取り込み」がアダになった

安倍晋三元首相の国葬[Photo by gettyimages]

 もちろん国政選挙が迫っていた当時と衆議院の解散がなければ2025年まで国政選挙がない現在とで、同一に論じるわけにはいかない。

また“菅降ろし”の原因は自然災害ともいうべきコロナ禍だったが、今回の支持率下落の原因は岸田首相がいきなり表明した防衛増税で、配慮すれば避けることができた人災といえるだろう。  

一方で最近の国際情勢などを見ても、日本の防衛費の増大は避けられない現実だ。ただしその財源を国債にするか税にするかで、意見は分かれる。参議院選の最中の7月8日に銃弾に倒れた安倍晋三元首相は「将来の国民も利益を享受する」と国債を財源にすべきと主張したが、岸田首相は「現在の国民が負担するべきもの」と税財源派だ。  

その背景には増税を目論む財務省が存在することは間違いない。岸田政権は経済産業省で事務次官を務めた嶋田隆氏を筆頭総理秘書官に据えているが、実際には財務省出身の木原誠二官房副長官の影響力が強いからだ。  そうした環境にあるがゆえに、岸田首相は臨時国会最終盤の12月8日に防衛増税に言及したのだろうが、むしろ「防衛費の増額を早く表明したい」という岸田首相の願望が窺える。

その根幹には安倍元首相の死去の際に「国葬」を提唱した発想と相通じるものがある。すなわり右派勢力を取り込もうという意図だ。  もっとも安倍元首相の国葬儀については、当初は多数が賛成したものの、時間がたつにつれて反対が増えてきた。それとほぼ同時に下落し始めたのが内閣支持率だが、防衛増税によってその傾向はさらに強まった。そうした事態を払しょくするために、果たして岸田首相は秋葉大臣のクビを切ったのか。