帝国データバンクの調査によると、漬物店の倒産、休廃業、解散が過去最多ペースだという。後継者不足、原料費の高騰、需要の低下など日本の伝統食には厳しい時代となったが、漬物にはもうひとつ、法改正という苦難が追加されている。
今年、倒産や廃業が過去最多ペースとされた事業者が目立つのは、日本の伝統の味を古くから受け継いできた分野だ。米農家にはじまり、豆腐店、米菓メーカーと続き、漬物店もその仲間入りとなった。
この調査の対象となる漬物店は、おもに野菜や果実を原料とした漬物生産を行う企業が対象だが、今年の1月から9月にかけての倒産、休廃業の件数は26件。これまでもっとも多かった2013年の24件を上回るペースとなっている。2013年は1年間で35件の倒産、休廃業という結果だったが、今年はさらに増える予測だ。また負債1000万円以上で廃業を決めた事業者に限定されているので、より小さな負債で廃業した事業者はもっと多いはずだ。
気候変動による不安定になった野菜の価格、高齢化、消費量の低下(20年で3割減)、海外産原材料に頼っているところでは円安、調味料、人件費、輸送費、資材費などのコスト高により収益が圧迫されている。これらは漬物業界に限らない問題だが、漬物には今年6月に施行された改正食品衛生法の追い打ちがある。
漬物製造の許可を得るには、床、壁、天井が洗浄消毒が簡単にできる区画を住居とは別に設け、肘で操作できるレバー式の水栓で手洗いができる流水式手洗い設備や、食材を流水で洗う設備を別に設けるなど、漬物作りの場を衛生的な工場化しなければならない。地元のおばあちゃんが代々受け継がれてきた木の樽で手作りした漬物の販売は、事実上禁止されてしまったわけだ。
故郷の味を守ろうと補助金を出す自治体もあるが、道の駅や直販所では漬物製品の入荷が途絶えるケースもあるという。「地域ごとに特色のある漬物文化の衰退や規模縮小が懸念される」と帝国データバンクは指摘している。