じつは「インボイス制度」を勘違いしている人が多い…導入直前に露呈した「消費税の正体」

 報道の量・質を伴わず、国民の正確な理解が足りていないという声が多いなか、10月1日から開始するインボイス制度【写真】日本経済の低迷は「消費税」が原因?データで見るこの国が「貧困化」したワケ  SNSでは同制度に対する怨嗟の声でたびたび関連ワードがトレンド入りしていたが、テレビのニュースではほぼ黙殺状態が続き、反対派の主張が詳しく報じられる場は少なかったように思う。  今回は関連ニュースなどを交えつつ、インボイス反対派の多く人たちの間で共通認識となっていると思われる主張を、記者会見やYouTube動画における有識者たちの発言を拝借して紹介。改めて“消費税のあり方”を考えてみたい。

勘違いしている人を見分けるキーワード「益税」

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 「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が、オンライン署名を財務省に提出した翌日の9月5日のことである。堀江貴文など何人かのネットインフルエンサーたちが、自身のX(旧Twitter)を更新。  『「これまで消費税を着服してたくせに」ホリエモン インボイス反対運動に苦言「ちゃんと払えや」SNSでは賛否』(女性自身、5日)などと報じられた。  この“苦言”に対するインボイス反対派の強い反発と巻き起こった議論から、「そもそも消費税とは何か?」という疑問を抱く人たちは、少なくなかっただろう。安倍内閣で内閣官房参与を務めた京大大学院教授・藤井聡氏は件の4日の記者会見に登壇し、講話で消費税の仕組みについて、こう解説していた。  「インボイスを勘違いしている人を見分けるキーワードが「益税」「ネコババ」です。まず多くの人々が素朴に消費税について思っていることは何かというと、店の人が100円のもので売ろうとする時に消費税10%で110円という価格をつける。100円はお店に入って10円は税務署に行くんだから10円はお店に預けているという気持ちを幾分持ちつつ、110円をレジで払います。これが多くの人々が抱く消費税のイメージです。伝票にもそう書いてある。  でもこれ嘘なんです。『嘘だ』と言っているのは僕じゃないんです。財務省が国会で言っているんです。法的にそうなっているからなんですね。この一点を押さえればインボイス制度の本質が見えてきます」  藤井氏は、「事実は110円という価格しかない。お店は売るときに消費税を(価格に)乗せるつもりじゃなくても、乗せるつもりになっても、どちらでもいいんです。預かり金じゃないから」と続けた。  「では、財務省は何と言っているか? 「売上から原材料費などを除いた部分、粗利・付加価値と言われる部分の11分の1(9.1%)を税務署に納めろ」と言っているんです。そして、この税率には累進性が設けられており、総売上1000万円以下の人には0.0%、1000万円を超えると9.1%の消費税がかかる。インボイス制度は0%から9.1%に上がった分の税金を納めてもらう制度です。それを払うのは下請けでも、元請けでも、消費者でもいい。「誰でもいいから払えや」ということだけが決まっている。従って、これは純然たる増税です。しかも税項目は消費税ですから、消費増税です」

じつは「インボイス制度」を勘違いしている人が多い…導入直前に露呈した「消費税の正体」

9/30(土) 8:03配信614

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消費税は企業の利益と人件費に課税する税金

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 「消費税増税は経済が苦しいときにはすべきではない。この意見に反対される方は世の中に存在しないと思います、理性的な方のうちでは。そして、今の経済状況は非常に厳しい。直近のGDP成長率は年率5%とか(ママ)ですが、これは円安のせいで名目上、輸出が増えて、輸入・消費が減って、数字的に5%に見えるだけです。こんなものを見て『増税してもいいのだ! 』と言う奴がいたら、申し訳ないけどバカです」(藤井氏)  しかし、政府の広報をそのまま流す、多くのインボイスに関するテレビ報道が繰り返される。生活実感からやや乖離した消費税の実態も背景にあるのかもしれないが、SNSでは失望と怒り、ツッコミの声が散見されるようになる。  9月25日に実施された「NHKへの公開質問状記者会見」で、「報道関係者が消費税について正しい知識がないことで、結果的に国民が消費税を正しく知る機会を奪い、誤解したままインボイス制度に賛成している」と述べたのは、元自民党衆議院議員で税理士の安藤裕氏。  くどいかもしれないが、前述の藤井氏の説明を補足する意味でも安藤氏の説明も紹介したい。  「事業者の売上をベースに計算するのが消費税。消費者へ転嫁しようが転嫁しまいが関係ありません。どんなに値引き販売していても、売上にかかる10/110の消費税を(課税事業者が)納税する。これが消費税の基本的な考え方なんです。  欧州では、消費税は事実上、利益+人件費に課税する税金「付加価値税」と同じだと言われています。売上から課税仕入を差し引くと「利益+非課税仕入」が残りますが、日本の消費税はこの「利益+非課税仕入」に課税しています。非課税仕入の代表的なものは人件費なので、消費税は「利益+人件費」に課税する税金。つまり付加価値税ということです」  これまで課税事業者は外部発注・業務委託する際、免税事業者から仕入れても仕入税額控除が受けられ、納付税額を減らすことができた。しかし、インボイス制度導入後はインボイス番号のある経費のみがこの対象となり、インボイスを発行できない事業者への支出は控除できなくなる。  「(インボイス制度は)一義的には課税事業者・原則課税の人に対する増税です。インボイス導入後の増税分について、課税事業者がとる対応策は3つあります。ひとつは自らが増税分を負担する。2番目が免税事業者に負担させる。3番目は値上げして消費者に負担させる。負担分の押し付け合いが始まっています」(安藤氏)  電力会社ではインボイス制度による増税分、電気料金の値上げすることが決定しており、反対派の間ではインボイス制度が消費者に直接的に影響を与える象徴的な出来事となっている。毎月の電気代としては一般家庭で1~2円の値上げらしいが、オフィスでも工場でも電気は当然使う。インボイス導入による物価高を予感させるのに十分なインパクトを持っていたようだ。  身近なだけに誤解も多いという消費税。反対派の言葉には個人事業主・正社員・非正規など働き方や雇用形態を問わず、多くの共感を呼ぶ説得力や気づきもあると思うのだが、みなさんはどう考えるだろうか?   【後編】『じつは「個人事業主」以外にも影響がある…インボイス制度と「停滞する日本社会」の関係』で引き続き解説する。