
「危険、軽率、最悪、不適切…」米通信コラム、「日本財政ギリシャ以下」の首相発言を酷評

米ブルームバーグ通信は22日、コラムニストのガロウド・リーディー氏の論考を配信し、日本の財政状況はギリシャよりも悪いと国会答弁した石破茂首相について、「日本国債に新たに圧力をかけかねない発言を軽々しくするのは危険極まりない」などと酷評し、「今は軽率さが許されるときではない」と訴えた。
タイミングは「最悪」
首相は19日の参院予算委員会で「わが国の財政状況は間違いなく、極めてよろしくない。ギリシャよりもよろしくないという状況だ」と強調した上で、「税収は増えているが、社会保障費も増えている。減税して財源は国債で賄うとの考えに賛同できない」と述べた。
ガロウド氏は、首相の発言について「最悪のタイミング」と断じ、大規模金融緩和正常化のため日銀が国債の買い入れを段階的に減額している状況を挙げ「市場参加者がすでに金利上昇に神経質になっていたこともあり、首相のコメントは借り入れコストのさらなる上昇を招いた」と指摘した。
5月16日には米格付け会社ムーディーズ・レーティングスが米国の信用格付けを引き下げており、ガロウド氏は「直後というタイミングで、国債に新たに圧力をかけかねない」と危惧した。
ギリシャと比較自体誤り
両国の財務指標を巡って、日本の国内総生産(GDP)比債務残高はギリシャと並び世界最大級。一方で、ギリシャと異なり日本は自国通貨を発行できる上、国債の大半が国内で保有されている。
ガロウド氏は「ギリシャが危機に陥ったのは、債務の多さだけが原因だったのではなく、欧州共通通貨ユーロを採用し、債務の大半を外国人投資家が保有していたからだ」とし、「ユーロ圏危機時のギリシャを念頭に置いていたとしても、その比較自体が誤り」と解説した。
その上で、「コメを買ったことがない」と発言し更迭された江藤拓前農水相を挙げて、「日本のメディアは江藤氏の発言ばかり取り上げるが、首相自身も極めて不適切で、はるかに重大なリスクをはらむ発言を行っていた」と報道のあり方に疑問を呈した。
