「火葬待ち」深刻、最長17日…斎場はフル稼働で住民団体「新斎場が必要」

 千葉県の柏、流山、我孫子の3市で運営する斎場「ウイングホール柏斎場」(柏市布施)で、遺体を長期間火葬できない「火葬待ち」が深刻化している。人口の増加や高齢化で死者が増えたためだ。冬期には10日待ちが常態化し、14日待ちも珍しくない。火葬炉の稼働率はほぼ100%に達しており、住民でつくる「布施斎場対策委員会」は、「新斎場の整備が不可欠」と訴えている。(木村透)

進む流入、高齢化

 3市の人口は計約77万人で、ファミリー層を中心に流入が続いている。一方で、住民の高齢化も進む。対策委員会によると、2022年度の死者は7874人で、21年度より352人増えた。ウイングホール柏での22年度の火葬は6829件で、21年度比で674件増だ。

冬期になると「火葬待ち」が長期化する「ウイングホール柏斎場」(柏市で)
冬期になると「火葬待ち」が長期化する「ウイングホール柏斎場」(柏市で)

 死者は冬期に増える傾向がある。22年4~6月は549~606人だったが、12月は739人、23年1月には870人に達した。火葬待ちは最長で17日だ。このほか、火葬許可を取り、斎場の受け付けを済ませるまでにも、死亡から2日はかかるという。

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 ウイングホール柏は1995年に開設された。12基の火葬炉はほぼフル稼働しているが、年間約1000体は火葬できず、他の斎場に運ばれている。

 遺体の保管には、ドライアイス代を含めて1日2万円前後必要となる。周辺地域の斎場を探す遺族も多いが、同様に混み合っている。料金も地元居住者の約10倍となる。

 3市の年間死者数は、2035年にピークとなる見込みだ。対策委員会の委員長は「死者がますます増え、待ち日数は延びていく。遺族は葬儀が終わらないと日常に戻れない。新斎場が必要だ」と訴える。

 ウイングホール柏を運営する「東葛中部地区総合開発事務組合」は17年、「ウイングホール柏斎場整備等基本計画」を公表。火葬炉の増設や葬送の簡素化などを行っても、25年度には対応できなくなるとして、「第二斎場の検討も必要となる」としていた。

市、建設に消極的

 しかし、新斎場の建設は簡単ではない。対策委員会は17年から毎年、3市に新斎場整備の要望書を提出しているが、回答は「友引の開場など火葬件数を増やす余地がある」「他市斎場や死亡数の推移など様々な検討が必要」などと消極的だ。委員長は「迷惑施設だから積極的に地元に誘致したい人はいない」と難しさの一因を語る。

 それでも、組合は今月から、斎場の今後のあり方に関する調査を始める。「市議会でも市民が困っていることが指摘されている。厳しい状況には違いなく、死亡数の予測や市民のニーズなどを調べ、解決策を探るための材料を集めていく」としている。

高齢化に伴う死者数の増加で、「火葬待ち」の長期化は全国的な傾向だ。公益社団法人「全日本墓園協会」(東京)が、全国の火葬場と葬儀場を対象に行ったアンケート調査では、火葬待ちの最大日数は「6~8日」が最も多く、31・4%を占めた。施設内に遺体を安置した理由では、「葬儀の日程調整」や「火葬待ち」が多かった。

 死者数の増加だけでなく、施設全体の容量不足も、長期化の一因になっている。

 施設の火葬能力は、火葬炉数とその回転数によって決まる。ウイングホール柏では、2021年度末までに火葬炉を12基に増やし、全て新型にした。ただ、火葬を増やせば、台座などの補修間隔が短くなり、告別室や待合室が足りなくなる。多くの葬送行為をスムーズに行うためには、建物全体を新しくする必要がある。

 先を見越した例もある。千葉県の船橋、八千代、習志野、鎌ヶ谷の4市は19年に新斎場(習志野市茜浜)を建設した。人口推計に基づいて第二斎場の検討を始めたのは約25年前だ。担当者は「候補地の変更もあって時間はかかったが、火葬炉は計27基に増え、今は火葬待ちの苦情はない」と話している。