自販機の住所を記入?振込手数料の押し付け合い…開始1ヵ月の現場で起きている「インボイスパニック」

税理士のもとに寄せられる悲鳴の数々

インボイス制度が取り上げられた10月25日の参院代表質問で、「これを廃止することは考えておりません」と言い切った岸田文雄首相(PHOTO:アフロ)

「誰の得にもならない制度のために、なぜこんなに心と時間を使わなければいけないのか。怒りと虚しさしかない」 【画像】アゴは弛み「髪がどんどん抜けている…」岸田首相の近影に絶句… 10月1日、インボイス(適格請求書)制度が始まったばかりだが、開始1ヵ月にして現場やSNSからは上記のような悲鳴の声が聞こえている。10月中旬に帝国データバンクが行った調査では、6割以上の企業がインボイス制度に「順調に対応している」と答えた一方で、業務負担の増加などを理由に、9割を超える企業が「懸念がある」と回答。Tからはじまる13桁の登録番号を記載した「インボイス」をめぐる“懸念”とはどのようなものなのか。 今回、インボイス対応の最前線に立つ4名の税理士と、公正取引委員会に通報をした2名の当事者から、現場で起きている“インボイス・パニック”について話を聞いた。 【座談会参加者】 全国青年税理士連盟 インボイス制度対策委員長・同連盟 前会長 山田隆一氏 同連盟 現法対策部長 高橋紀充氏 税理士法人東京南部会計 代表社員税理士 佐伯和雅氏 公認会計士・税理士・声優 あんじー氏 若手声優 Aさん ベテラン声優 Bさん ◆「国税庁が用意しているインボイスコールセンターは全然つながりません」 「私が取得した資格は公認会計士であって、“インボイスアドバイザー”じゃないのに……」 こう嘆くのは、公認会計士・税理士で声優でもあるあんじー氏だ。あんじー氏の働く会計事務所では、制度開始以降、顧客からの相談が急増。「インボイスをもらえない事業者との取引では、先方に値下げをお願いするしかないのでしょうか」といった経営方針に関わるような相談もあり、あっという間に時間が消えていくという。 「導入前から顧客への制度周知は行ってきたものの、方針を決めきれない顧客も多いです。私は税の相談業務が本業ですから仕方ないといえば仕方ないですが、事業者の方は想像を超える無駄な作業に時間を取られていると感じます」(あんじー氏) 「厳格に制度を運用しなければ」という生真面目な対応と煩雑な制度が掛け合わさった結果、現場の事務負担がとんでもないことになっている。 「正直、“事務負担”と一言で済まされるようなものじゃないと思っています。インボイス制度で増える事務負担は面倒なだけで収益にはならないので、実務を担う人はモチベーションもだだ下がりです。 それでもまだ税理士に相談できる方は良いほうで、小さな事業者の方は専門家とのつながりがない方も多い。かといって、国税庁が用意しているインボイスコールセンターは全然つながらないと聞いています」(あんじー氏)