神保容疑者の逮捕容疑,警視庁幹部は「同僚や組織に対する裏切り行為そのものだ」と怒りをあらわにした。

神保大輔容疑者(43)

巨大スカウト集団に捜査情報漏えいか 警視庁警部補を逮捕 見返りに金銭受領?自宅から現金数百万円 「羽振りよくなった」の声も

国内最大級のスカウトグループ「ナチュラル」に警視庁の捜査情報を漏らしたとして、警視庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)が12日、地方公務員法(守秘義務)違反容疑で警視庁に逮捕された。警視庁幹部は「同僚や組織に対する裏切り行為そのものだ」と怒りをあらわにした。 【写真】「内部にスパイがいる」 警視庁の5年を超える捜査と身内の裏切り  12日午後3時。警視庁本部では、容疑者の逮捕についてのメディアへの説明があり、報道各社が急きょ集められた。  集まった記者24人を前に、警視庁幹部は「ナチュラルの捜査に従事していたまさにその捜査員が、相手に取り込まれた」と語った。  神保容疑者の逮捕容疑は4月下旬~5月上旬に計2回、ナチュラルのメンバーに対し、メンバーの関係先が捜査用カメラにどう映っているかがわかる画像を送信したというものだった。  報道各社からは質問が続き、会見は20分ほどになった。幹部は、神保容疑者が2004年に警視庁に採用されて以降計約14年間、組織犯罪を捜査し、遅くとも23年ごろから今春まで、ナチュラルの捜査を担当していたことを明かした。  幹部は「全国警察を挙げて組織犯罪の検挙に取り組む中、その捜査に従事していた警察官による言語道断の行為であり、極めて遺憾である」と語った。(三井新、西岡矩毅)

「内部にスパイがいる」 警視庁の5年を超える捜査と身内の裏切り

有料記事三井新 西岡矩毅2025年11月12日 14時15分

 国内最大級のスカウトグループ「ナチュラル」に警察の捜査情報を漏らしたとして、警視庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)が12日、地方公務員法守秘義務)違反容疑で警視庁に逮捕された。捜査が始まったのは5年以上前で、神保容疑者は捜査チームの一員だった。身内の「裏切り」に、警視庁内に衝撃が走っている。

 大勢の男が何者かを取り囲み、殴ったり蹴ったり――。2020年6月、東京・歌舞伎町での様子を映したこんな動画がツイッター(現X)で拡散した。

 捜査関係者によると、警視庁は、路上スカウトの引き抜きを巡るナチュラルと指定暴力団住吉会系組織のトラブルとみて捜査を始めた。

 捜査の過程で、ナチュラルについて、暴力団と対立する粗暴さや、メンバーが約1500人という組織性、年間売り上げ約45億円という資金力が判明していった。

 ナチュラルが数千万円かけて開発した独自アプリでは、警察を「ウイルス」と呼び、警察官の顔がメンバー間で共有されていた。

 警視庁は暴力団対策課に加え、風俗店を担当する保安課など、部門を超えた捜査チームを作った。違法なスカウト行為や風俗店へのあっせん行為で、女性らが被害を受けている恐れがあり、組織を挙げて捜査する必要があった。

捜査の節目、「コウカク」から姿を消した1人の男

日本最大のスカウトグループ側に捜査情報を漏らしたとして、警視庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)が逮捕されました。警察内部に衝撃が広がっています。 【写真で見る】あごにマスクでこちらを見る容疑者 巨大スカウト集団に捜査情報漏えいか 警視庁警部補を逮捕 見返りに金銭受領? 帽子をかぶり、マスクをあごにつけて歩く男。警視庁・暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)です。 記者 「神保容疑者を乗せた車が警視庁本部に入ります」 日本最大のスカウトグループに、捜査情報を漏らしたとして逮捕されました。 神保容疑者は今年4月と5月に、巨大スカウトグループ「ナチュラル」をめぐる捜査情報をグループのメンバーに漏えいした疑いが持たれています。 「ナチュラル」は、女性をスカウトし、違法に風俗店に紹介。女性の売り上げに応じて風俗店から「スカウトバック」と呼ばれる報酬を得るなどし、2022年だけでも40億円余りを集めたとみられています。 警視庁は、スカウトバックの一部が暴力団など反社会的勢力に流れているとみて、ナチュラルの壊滅を目指して摘発を強化。その捜査の過程で、ナチュラルの関係先にカメラを設置し、関係者の動きを確認していました。 神保容疑者は捜査の担当から外れたあと、ナチュラルが独自に開発したアプリにカメラの画像数枚を共有していて、それが今回の逮捕容疑となりました。 関連はわかっていませんが、今年1月には、ナチュラルのメンバーの男性を逮捕しようとした直前に男性が逃走したこともありました。 神保容疑者は組織犯罪の捜査を14年間担当し、おととしから今年3月までの間、ナチュラルの事件捜査に関わりました。 神保容疑者を知る捜査関係者は… 「昔は安い弁当を買う生活だったのに、急にヴィンテージのジーンズを履いてきたり、車も買ったりしていた」 突然、羽振りが良くなったと話します。 神保容疑者の自宅からは現金数百万円が押収されていて、警視庁は、捜査情報の漏えいの見返りに金銭を受け取った可能性もあるとみて捜査を進めています。 一体いつ、そして、どのようにして捜査情報漏えいの疑いがあると分かったんでしょうか?本橋記者の報告です。 詳細については現時点で分かっていないのですが、神保容疑者はおととしから今年3月までの間、「ナチュラル」が関与する事件の捜査に関わっていました。 ナチュラルは独自開発したアプリで私服警察官の写真を撮影して共有したり、警察官から職務質問などをされた際の対応マニュアルを共有したりして、警察から摘発されないようにしていました。 神保容疑者はこのアプリを使って情報漏えいしていたということで、かなり組織に取り込まれていたとみられます。 今年1月、ナチュラルの男性を逮捕しようとしたところ、男性はその場におらず、逃走したこともありました。 当時、「捜査情報がどこから漏れたのか」「メディアが情報漏えいした」などと問題視した捜査幹部もいるほど、暴力団対策課の中では、摘発の詳細という重要な捜査情報の漏えいがあったとして疑心暗鬼になっていました。 ある捜査幹部は「捜査員としてあるまじき行為」と断罪していて、警視庁は12日に行われた発表でも「警視庁に対する同僚や組織への裏切り行為そのもの」と糾弾しています。 警視庁は今後、徹底した捜査で事実関係を明らかにし、再発防止に取り組むとしています。