石原慎太郎邸が解体 東京・田園調布 長男の伸晃氏が語る父の晩年

 昨年2月に89歳で亡くなった石原慎太郎・元東京都知事が取材に対応する際など、たびたびメディアにも登場した東京・大田区田園調布の自宅が、売却され、取り壊されている。解体工事は10月に始まり、向かいに住む人は「寂しくなるね」としみじみ語る。慎太郎さんは晩年、この家でどのような日々をすごしていたのか。

【写真】石原慎太郎さん「死んだら虚無」の死生観

 長男の石原伸晃さん(66)によると、家は40年ほど前に建てられた。れんがづくりの2階建て。床面積約340平方メートルの豪邸だが、4兄弟はそれぞれ独立し、「貸そうとしたが設備が古いので断念した」。

 作家でもあった慎太郎さんが遺(のこ)した多くの原稿や資料、蔵書などは1年がかりで整理し、出身の一橋大学や北海道小樽市などに寄贈したという。

伸晃さんによると、慎太郎さんが膵臓(すいぞう)がんで「余命3カ月」と宣告されたのは2021年10月。「痛みを感じないようにしてほしい」「自宅にいたい」と望んだため、伸晃さんはターミナルケア専門の医師に痛みを取る薬を処方してもらい、自宅で療養できるようにした。

 慎太郎さんの妻の典子さんも、体調を崩していた。お手伝いさんに常駐してもらい、伸晃さんら兄弟4人も、ローテーションを組んで正月などはこの家ですごした。慎太郎さんは病床で原稿をつづりながら、「死ぬのはつまらない」「あとは頼むな」と繰り返し語ったという。

 伸晃さんに「俺の人生、どう思う?」と尋ねたことも。「すばらしかったんじゃない?」と答えると、「そうだよな」。最後の正月に突然、「ラーメンが食べたい」と言い、完食。その後、体調を崩し、亡くなったという。典子さんも1カ月後に倒れ、後を追うように84歳で亡くなった。

 「死んだら虚無」という死生観を語り、海への散骨を望んだ慎太郎さん。「遺骨を全部まいてしまうと墓で弔えなくなる」と伸晃さんが分骨を提案すると、「わかった。それでいい」と応じた。両親を弔い、伸晃さん自身も「終活について真剣に考えるようになった」と語る。

 家の解体工事は、年内に終わる見込みという。(森下香枝)