多様性うたう万博で買えないチケット 視覚障害者「排除されている」

 4月13日に開幕する2025年大阪・関西万博の前売り入場券を視覚障害者は買えない――。オンラインによる購入は画面が見えないので難しく、コンビニエンスストアの端末には障害者向けチケットの選択肢がない。

 一人一人の多様性を認める「いのち輝く未来社会のデザイン」を理念に掲げる万博。当事者や障害者団体は「うたい文句と違い、排除する仕組みになっている」と訴える。

「アメリカ館に行きたい」

 大阪府高槻市の惣埜(そうの)百合子さん(75)は生まれつき弱視で視力が徐々に低下し、今は全盲で1人暮らしをしている。大阪・関西万博の開催が決まってから入場を心待ちにしてきた。

 1970年の大阪万博には父と2人で行った。よく見えないながらも独特の熱気を感じた。宇宙の神秘に興味があり、最も訪れたかったのは「月の石」の展示で人気を博したアメリカ館。あまりの人混みで入場できず、半世紀以上たった今も後悔が残る。

 「今度こそ、あこがれのアメリカ館に行きたい」

 しかし、23年11月から販売されている電子チケットを買うには、オンラインによる「万博ID」登録などの作業が必要だ。スマートフォンをうまく使えない惣埜さんには難しく、気軽に頼める家族もいない。電子チケットの購入は現実的ではなかった。

 そんな惣埜さんに24年10月、吉報が届いた。スマホなどの操作が苦手な人のために、紙のチケットが発売されたのだ。コンビニか旅行代理店で扱っていると聞き、さっそく商店が集まるJR高槻駅前へ向かった。

障害者用チケット「ありません」

 まずはコンビニに入った。店員に障害者用の1日入場チケット「特別割引券」(1人3700円)の買い方を尋ねると、こう返答があった。

 「ここでは買えないんです」