スウェーデン揺さぶるギャング暴力の横行

銃声、麻薬、縄張り争い…

かつては、「第三の道」を歩む社会民主主義の理想郷として世界が注目したスウェーデン。手厚い社会福祉、平等主義、何より「安全な社会」がスウェーデンの代名詞とされていた。しかし今、その清廉なイメージは、銃声と爆発音によって打ち砕かれつつある。麻薬を巡る縄張り争い、報復の連鎖、そして10代の若者まで実行犯に加担する異常な状況……。スウェーデンを覆うギャングの暴力は、単なる治安問題を超え、国家の根幹を揺るがす深刻な社会病理として顕在化している。

スウェーデンの銃撃・爆発事件の現実

 スウェーデンにおけるギャング関連の暴力の激化は、統計データから見ても「異常事態」となっている。欧州連合(EU)の統計局のユーロスタットによれば、スウェーデンの人口10万人当たりの銃器による殺人件数は、EU平均を大幅に上回る。これは、ギャング問題が慢性化している他の欧州諸国と比較しても際立つ数字だ。

 特に衝撃的なのは、爆発物による攻撃の頻発である。

 2019年には年間257件の爆発事件が発生し、2020年には300件を超えた。これは、一般的な銃器による殺人事件よりもはるかに多い。ギャングは、警告や威嚇、あるいは対立組織への報復手段として、手榴弾や簡易爆発装置(IED)を日常的に使用する。標的は多くの場合、対立メンバーの住居やビジネスだが、爆発の規模によっては近隣住民が巻き添えになるケースも少なくない。

 さらに深刻なのは、若年層の犯罪への引き込みだ。スウェーデン警察の報告によれば、ギャング関連の銃撃事件の実行犯や麻薬密売の「運び屋」として、10代の少年たちが多数逮捕されている。彼らは社会からの孤立、経済的困窮、あるいは単なる承認欲求から、ギャングの甘い誘いに乗り、一度足を踏み入れると抜け出せない悪循環に陥ってしまう。

スウェーデンの銃撃事件、10代の容疑者を逮捕 ギャング犯罪との関連を捜査

規制線が張られた銃撃事件の現場付近
画像説明,警察は銃撃事件とギャング犯罪の関連を捜査している

2025年5月1日

スウェーデンの都市ウプサラで3人が殺害された銃撃事件で、警察は4月30日、18歳未満の容疑者を逮捕したと発表した。

事件は29日、首都ストックホルムの北にあるウプサラの中心部の美容院で発生。容疑者はスクーターで逃走したとされ、警察が行方を追っていた。

警察は記者会見で、殺害された3人について、年齢は15~20歳だが、身元が「100%」確認されたわけではないとした。

現地メディアなどによると、事件にギャング犯罪が絡んでいる可能性も警察は捜査している。被害者の1人は、有名なギャングのリーダーであるイスマイル・アブド氏の母親が2023年にウプサラの自宅で殺害された事件で、捜査の対象になっていたという。訴追はされなかった。

若者のギャング犯罪が増加

スウェーデンでは近年、10代が関係したギャング犯罪が続発している。破壊行為から殺人まで、さまざまな事件が起きている。

政府はこの問題に対処するとして、15歳未満の子どもについても警察の通信傍受を認める法案を提出している。

グンナー・ストロマー法相は30日の記者会見で、警察は具体的な証拠がなくても通信傍受ができるようになると述べた。

現地メディアによると、ストロマー氏は法案について、プライバシー侵害につながると認める一方で、10歳や11歳の子どもがギャングに勧誘されるのを阻止するために必要だと考えているという。

政府は、銃規制の強化も進める方針を示している。

今回の銃撃事件は、春祭りの行事ワルプルギスの前日に起きた。この行事では、大学都市のウプサラに多くの人が集う。

現地警察署トップは、ウプサラ全域で今後数日間、警察が大々的に警備にあたるが、さらなる暴力事件を回避できる「保証はない」と述べた。

(英語記事 Swedish police arrest teenager after fatal triple shooting