

第27回参院選は自民、公明両党が議席を大幅に減らし、改選数1の「1人区」で自民は14勝18敗と負け越した。石破茂首相は続投の意向を示したが、昨秋の衆院選に続く国政選挙での連敗となれば、自民党内で首相の責任を問う声が広がるのは必至だ。野党は勢い付いており、首相はさらに厳しい政権運営を強いられることになる。
首相は20日夜、NHKなどの番組で「厳しい情勢、本当に謙虚に真摯(しんし)に受け止めなければいけない」と述べる一方、「比較第1党の責任を果たしていかなければならない」として続投する意向を示した。
勝敗を左右する「1人区」で苦戦し、首相が勝敗ラインに掲げた非改選を含めた参院での与党の過半数維持は微妙な情勢だ。それでも政権継続にこだわる理由について、首相は周辺に「野党はバラバラで、国家に対する責任もある。楽な道を選んではいけない」と語った。
首相の判断の背景には、政権の「顔」を替えても少…

「助けてください」 舌禍謝罪の自民・西田氏 火消し図った選挙戦
選挙戦の終盤、応援弁士として駆けつけた小泉進次郎農相(右端)と街頭に立つ自民現職の西田昌司氏(中央)=京都市で2025年7月16日、久保聡撮影
それは、これまで見せたことのない姿だった。
「みなさん、何とか助けてください」
「どうか、力を与えてください」
トレードマークの白髪を振り乱し、必死の形相で深々と頭を下げる。目は潤み、声は震えていた。
過去最多タイの9人が立候補し、大激戦となった参院選京都選挙区(改選数2)。4選を目指した自民現職の西田昌司氏(66)にとって、かつてない厳しい選挙となった。
党派閥の政治資金パーティーを巡っては、収支報告書に411万円の不記載(2018~22年)が発覚した。
5月の憲法記念日に沖縄県であったシンポジウムでは、第二次世界大戦末期、沖縄戦に動員されて亡くなった学徒らを慰霊する「ひめゆりの塔」(糸満市)の展示内容について、「歴史の書き換え」と持論を展開。大きな批判を招き、一部撤回と謝罪に追い込まれた。
「裏金」「ひめゆり」が火種に
13、19年の参院選は、いずれも40万票前後を得て、2位に大差をつけての圧勝だった。だが今回は、党への逆風に加えて「裏金」「ひめゆり」が新たな火種となり、「消えるどころか、燃え広がっている状態」(自民関係者)で選挙戦に突入した。
公示前の西田氏は、支援者向けの集会などで「ひめゆり」発言にほとんど触れることはなかった。それどころか、所属議員らが集う府連大会では「事実を語った」として、自身の発言について寄稿した月刊誌のコピーを配り、一読を促す余裕も見せていた。
公示後に「火消し」「おわび」行脚
公示後は一転、「火消し」に回った。個人演説会でも、自身の発言に積極的に触れるようになった

立憲、非改選含め野党第1党を維持 政権交代へ問われる連携手腕
テレビのインタビューを受ける立憲民主党の野田佳彦代表=東京都千代田区で2025年7月20日午後10時8分、藤井達也撮影
立憲民主党は非改選を含め、野党第1党を維持した。野田佳彦代表は、政権交代への道筋を三段跳びになぞらえ、昨年の衆院選を「ホップ」、今回の参院選を「ステップ」と位置づける。次期衆院選での「ジャンプ」に向けた弾みとしたい考えで、20日夜のNHK番組では、政権交代に向けて「野党で連携することが大前提だ」と述べた。だが、国民民主党や参政党が躍進する中、改選22議席の立憲は伸び悩んでおり、野田氏が野党をまとめきれるかは不透明だ。
立憲は、勝敗のカギを握るとされる「1人区」で、日本維新の会や国民民主、共産党とそれぞれ候補者を調整。全国に32ある1人区のうち17選挙区で、無所属も含めて野党4党系に一本化した。公示日の3日の第一声を宮崎県で、選挙戦最終日の19日の最後の演説を福島県で行うなど1人区を重視する姿勢を示した。
政策面でも、コメ価格高騰で農業への関心が高まる中、農地面積に応じて農家に直接交付金を支給する「食農支払制度」の創設を提唱。1人区に多く、自民党が支持基盤の一つとしてきた「農業票」の取り込みを図り、東北をはじめとした1人区で選挙戦を優位に進めた。
一方、物価高対策を巡って、野田氏はもともと消費減税に慎重な立場をとってきたが、党内議論に押される形で、食料品の消費税率ゼロ%にかじを切った。消費減税を「時限的な措置」、「赤字国債に頼らない」とすることでこれまでの主張との整合性を強調。これにより、主要野党がそろって消費減税を掲げ、自民が減税を否定する構図となり、対立軸が明確化した。
政治とカネの問題をめぐっては、6月の東京都議選で、都議会会派の裏金事件が影響し、自民が過去最低の議席数に終わったことを踏まえて追及を続けた。派閥裏金事件に関係した旧安倍派議員らのいる選挙区を中心に「反省していない。負けるわけにはいかない」などと批判のトーンを強めた。
選挙戦に入って、排外主義的な主張が広まると「世界中で分断と対立が生まれているときに、日本でも対立を助長するような論調が出てきたことを大変危惧している」と表明。外国人の受け入れには積極的な姿勢を示し、事実を踏まえた冷静な対応を呼びかけた。
参院選で野党が議席を増やしたことで、自民党内からは立憲との「…