米騒動「放置」の農水省 突然の「備蓄米放出」方針転換はなぜ?

 コメの価格高止まり対策として、農林水産省は近く、政府備蓄米の市場放出に踏み切る。しかし、これまで同省は一貫して備蓄米の放出に否定的な立場だった。突然の方針転換の裏に何があったのか。

昨夏の米騒動から「静観」続けた農水省

「備蓄米の活用ができる状況にしたい」――。江藤拓農相は1月24日の閣議後記者会見で、政府備蓄米の「放出」ルールを見直す方針を突如表明した。

 31日には具体的なルールを変更。コメの凶作時などに限定していた従来基準に加え、「円滑な流通に支障が生じる場合」にも放出できるようにした。さらに2月7日には江藤氏が備蓄米の放出を早期に実施する考えを表明し、14日には入札で売り渡す数量や対象者の概要を公表。異例の猛スピードで方針転換を急いだ。

 コメの品薄や価格上昇が突如日本を襲った昨夏の「令和の米騒動」を巡り、農水省の対応は結果的に「大失態」といえる。高騰する米価については当初から、「今後、新米が順次供給され円滑な米の流通が進めば、需給バランスの中で一定の価格水準に落ち着いてくる」(当時の坂本哲志農相)との主張を繰り返した。

 そして当時から備蓄米放出を求める声はあったが、「全体としてコメが足りていないわけではない。政府が市場価格に介入することは避けなければならない」(同省幹部)として、一貫して反対の立場を取り続けてきた。