元特攻兵(鶴田浩二)に対して 水谷豊「特攻で死んだ友達のことを忘れねえとか、さんざんかっこいいこと言って、それだけで消えちまっていいんですかねえ。
あの頃は純粋だった、生き死にを本気で考えていた、日本を命をかけて守る気だったとか。いいことばっかし並べていなくなっちまっていいんですか。そりゃ昔のことだから、懐かしくきれいに見えるのはしょうがないでしょう。
俺だって小学校の頃を思うと、今のガキよりもましな暮らしをしていた気がするもんね。だけど懐かしいようなことを言いまくって消えちゃっていいんですか。
戦争には、もっと嫌なことがあったと思うね。
どうしようもねえなと思ったこととか。そういうこと、いっぱいあったと思うね。戦争に反対だなんて、とっても言える空気じゃなかったと言ってたね。だいたい反対だなんて思ってもいなかったって言った。
いつごろから、そういうふうになっていったのか、俺はとっても聞きたいね。
気が付いたら国じゅうが戦争やる気になっていたとか、そういうふうに、どういうふうになっていくのか。
そういうこと、まだ何にも言わないじゃないか。どうせ昔のことをしゃべるんだったら、こういうふうに人間はいつの間にか戦争をやる気になっていくんだっていうところあたりをしゃべってもらいたね。
そうじゃないとよ、俺たち、本当のところ、戦争ってものは、そんなにひどいもんじゃないかもしれない、案外、勇ましくて、いいことばっかしあるのかもしれない、思っちゃうよ」
1979年『男たちの旅路・流氷』水谷豊が鶴田浩二に発した科白!
これを書いた脚本家、山田太一氏の死(2023年11月29日、没年89)からまもなく2年。







