
電気代に上乗せされた賠償金
東京電力福島第1原発事故の処理費用が膨らみ続けている。賠償などにかかる費用の想定は現在、計23・4兆円。事故から14年となったが、原発で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しはめどが立たず、収束までの道筋は見えていない。原発再稼働もままならない東電の賠償能力が問われる中、電気を利用する全ての人がその負担を背負わされている。
23・4兆円のうち、被災者らへの賠償費用は9・2兆円。実はこの一部は既に全国の家庭が負担している。事故の「加害者」である東電が払うべき費用を、なぜ電気の利用者が負担するのか。
「本来、原子力事業者が負うべき責任を小売りに負わせている」。福岡市の新電力「グリーンコープでんき」の東原晃一郎理事はこう憤る。
賠償費用は当初、東電と他の原発を持つ電気事業者が負担することになっていた。しかし、事故直後に5兆円と見積もられた費用の総額は倍近くまで拡大。そのため、国は新電力を含めて原発を持たない小売事業者にも負担を課す制度を導入し、2017年に省令を改正した。20年に新たな料金制度を認可し、送電線の利用料である「託送料金」に上乗せする形で賠償負担金を回収できるようにした。
「さかのぼって負担」との国の理屈
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